.著作権の話 。 最近の著作権まわりの法改正を見ていておかしいと思うのは、 「著作権というのは著作者を守る法律である」という近眼視に陥るあまり、 著作を利用する側の権利を無視してるんじゃないか、という部分やね。 久保田くんたちの横暴傲慢とも思える主張に対して それを止める圧力が中からも外からも働きにくい構造的な原因は、 結局は著作利用者の権利が明確になってないからなんじゃないかという気がする。 著作というのが著作者の独占的私有物だというのならば、 著作者の一方的な権利保護に傾いてもまあしょうがない気もするのだが、 前にも書いた通り著作というのは社会的公共財としての 側面が存在すると私は思うから、 これはあまりいい状況とはいえないんじゃないかな。 もちろんこのことは知的所有権全般に言えることだ。 .そういうことを踏まえて最近私はむしろ 「勝手に著作物をコピーしちゃいけない」 っていう copyright の根幹部分(複製権とか頒布権とかその辺ね)をも、 そろそろ見直すべきなんじゃないか、という方向に傾いてたりして。 私も著作権で飯食ってる身なのでこういうことを言うのはアレなんですがねぇ。 でも、自分の社会的役割を考えたら、 自分の利益ばかりを考えていてもいかんでしょ。 法がザルなのをいいことに違法コピーするアホと、 法がザルなのをいいことに利権をむさぼるアホの何が違うというのだ。 著作権転がしビジネスが「おいしすぎる」現状を考えると、 著作権という考え方や、これによってさまざまな業界に発生する権益というものの 正当性に疑問が生じるのは(私としては)自然な流れなんじゃないかと思う。 .しかしながら、一定の権利保護がないと著作という 無形のもので商売ができないのも事実だし、 既得権益を持ってる人間というのは往々にして力も強いので、 なかなか難しいやね。 .ところでなんで今、JASRAC とか久保田くんとかが暴走気味なのかというと、 このところの不況があるんだろうね。 著作権ビジネスは 90 年代にバブルを迎えてたのよね。 今になってあまり振るわなくなってるのは、 実は、世の中全体の不況に引きずられて単にバブルが弾けただけなんだが、 彼らは業界団体なので、業界の意向として、 このバブル崩壊による経営責任問題などの噴出を覆い隠すために、 違法コピーなどの締めつけや、 どさくさ紛れの権利拡大に走っているんじゃないかという気がしないでもない。 .まあ、違法コピーは現行法ではあくまでも違法なので、 彼らがそれを法の範囲で厳しく締めつけるのは構わないけど。 でも、困ったことに、今彼らがやろうとしてるのは、 彼らの持っている既得権益の裾野を広げようとしているのに他ならないのだよね。 .たとえば、例の中古販売にからむ裁判に関していえば、 中古業者の権利とゲームメーカーの権利の境界線は、 現行法のもとであの判例によって明確になった、ということに他ならない。 ところが久保田くんはそこで「法がおかしい」 という論点に持っていこうとしてる。 すでに権利の範囲が判例によって明確化されたのだから、 法をより厳しい方向に持っていくのだとすれば、 著作権者の権利を拡大しようとしているに他ならない。 でも、彼らはこれを「自分たちの権利を守るため」と主張する。 何か変じゃないか? 著作を利用する側の権利を無視してる、というのはこういうところ。 とりあえず、その辺の意識を変えるところから始めてもらいたいが、 彼らにそんなことを言ってもきっと馬耳東風だろうな。 .しかしまた新年早々重いことを書いとるな俺。 .ただ、権利はやっぱり基本的には勝ち取るものであって 天から降ってくるものではない、という考え方からすれば、 彼らのモチベーション自体はまあ間違ってないわな。 問題があるとすれば方法論かのうやっぱり。 |
.ううむ 、 これ、 90 年代初頭あたりから今までの事情をちゃんとわかってる人*以外*が 読んだら 386BSD のあたりを誤解するのと、 分析はもとより、事実認定に関して語弊がありまくるので、 読まないほうがいいです。 確実に正しいのは、「Linux が時流に乗って流行った」という点と、 「BSD はシェアを取れなかった」という点だけ。 Linux が生まれた理由に関しても、 386BSD や 4.4BSD が不遇になった理由に関しても、 裏を取らずに表層的な出来事に理由づけした文章にしかなってませんし、 事実はもっとずっと面白いぞ :D .というか、2000 年の雑誌記事で 「本家 4.4BSD 自体が Intel CPU をサポートする予定です」 と現在形で書くのはかなり微妙な表現やね。 「当時は本家 4.4BSD 自体が Intel CPU をサポートする予定でした」 と書くべきだろうなぁ。いくらなんでも、素で、 2000 年の時点で 4.4BSD がでてない / 4.4BSD が Intel CPU を サポートしてないと思ってるわけではないだろうし。 過去の時点の予定を現在形で書く表現がごく稀にないわけでもないが、 文学以外ではあり得ないよなぁ……。 .私は Linux の流行った理由に関しては、 この文章にある通り「Linux が時流に乗った」という部分は完全に認めつつ、 日本での状況も踏まえてもうちょと斜に構えた見解をもってるわけですが、 それはまたの機会ということに。まあ、ちょくちょく日記には書いてたけど、 そろそろちゃんとまとめてもいいかもねん。 とはいえ、自分に役に立たん文章とか、 後ろ向きの文章(ここでは歴史文書の意) とかをまとめる気力がないから書かないかも。 |
.某 irc より。 「 わかってるねんで。わかってるねんけど、 ちょっとときどきごっちゃになるねん 」。 一つ上のリンク先のも両方混在。 |
.相関 。 擬似乱数というのは有限の代数系が絡むので、 一つ前の値を使うから相関がある、 と一口にいえるほどには単純でもありませんな。 .一つ前の値だけから次の値を作り出す典型的な擬似乱数としては 線形合同法というのがあって、 こいつは x[n+1] = (a*x[n]+2*b+1) % M という式なので簡単ですが、 パラメータ a と b を上手くとれば一次元の数列はそれなりに良好です (M は整数のビット幅で勝手に決まるのが普通)。 しかしながら、簡単なだけあって、 どんなにパラメータをうまく取っても周期があまり長くない、 多次元の乱数を生成しても格子状に点が集中してしまう、 二進数にしたときのビットパターンにくせがあるなどの問題があるので、 単純なゲームでも使いにくいものです。 標準 C 言語のライブラリ関数である rand() は 線形合同法であることが多いのであまり使えません。 .もうちょっと高級なものだと、M 系列乱数というのがあって、 これはちょっと複雑かつちょっとメモリ食い (とはいえせいぜい 1k 〜 2k バイト程度) ですが、線形合同法よりも周期が長く、多次元の乱数にも比較的良好で、 ビットパターンにも特に癖はありません。 |
.昨日の乱数の件に関しては、 きしもと さんからメールをいただきました。どうもです: 塩崎様,唐突なメールで失礼いたします.きしもと,と申します .全くおっしゃる通りですな。線形合同法は計算は楽だけど 基本的には他のものを使ったほうがよく、あえて線形合同法を使うなら、 パラメータを自分で決めようとしたらいけません。 また、基本的には乱数生成系は良いものを引き写しにするのが 間違いがなくていいです。 .問題は、 「良いと言われている」ものが実は「良くなかった」りする、 ということもあるので、その辺の見極めですね。 線形合同法は特に、 「良いと書いてあったけど実は良くなかった」 パラメータ例というのが過去の文献には多かったと聞くので (まあ最近の数学書ならそんなことはないでしょうけど)、 基本的には忌避しといたほうが無難でしょうね。 |
.(う)さんからも、「ハード化が簡単」 「M 系列でもパラメータに気を使う必要はある」というメールが。 .ハード化に関しては、M 系列乱数みたいな擬似乱数生成法を generalized feedback shift register (GFSR)法と呼ぶことからわかるとおり、 レジスタシフトとそのフィードバック(M 系列の場合は xor)で 実現できるのでハード化が容易なんですな。 具体的には、N 個フリップフロップを並べて、 原始多項式の項に対応するところからタプルを出して、 各タプルの値を xor してフィードバックするだけですな。 .なるほど 、 生の M 系列ビット生成器だったのですね。 こういうのから整数の一様乱数をうまく生成する方法も、 論文をひっくり返せば出てきそうな気もしますね。 |
.今週は昨日発売で昨日買ってきたんだが、昨日の日記で書き忘れた。 .肉塊。アイツは何かを掴んだぞ。 .ラーメン(2)。次はクマを飼ってる家に行ってください :D .野球(2)。意味もなく挿入される萌えシーン。 .フェイスマスク(1)。 わはは、 正義と悪というあくまでも相対的な概念を絶対視するような人々を、 痛快におちょくってるなぁ。 .×。竜のような男、左巻き。 .盗人。ニセ D。 .愛梨様。小萌級鏡餅。よし、鏡開きは俺にまかせろ。 本編のほうは、韻の神様降臨で助かる。 .フェイスマスク(2)。ゆううついんうついんてるはいってる。 .サッカー。髪につくとなかなか取れないんだよね<何が? .忍者。この微妙なエロっぷり、いつの時代のチャンピオンだよ、これ :D .柔道(2)。木亥ボタン。ちなみに柔道(1)はドカベンプロ野球篇<忘れてやれ。 |
.こんな話 があるので最近の X と IPv6 の事情をば。 .私の知る限り、現在 IPv6 対応しているのは、Solaris9 の X 環境と、 KAME のパッチを当てた XFree86-4.x 、 そして ReflectionX という Windows 用の商用 X サーバくらいです。 X の関連プロトコルのうち、IPv6 化されているのは Xtrans がらみの部分、 すなわち X プロトコル自体とフォントサーバプロトコルだけです。 逆に言うと、XDMCP はサポートされていません。 XDMCP は、Xtrans とは独立してるのと、UDP なのと、 IPv4 アドレスが生でプロトコル中に埋めこまれている部分が あったりするのとで、いろいろややこしい。 .基本的に、Solaris9 および XFree86 with KAME patch では、 名前が引けているところでは何も考えずに普通に DISPLAY を 設定することによって相互接続が可能です。 問題はアドレス指定でして、これが Solaris9 と KAME patch で異なります。 localhost のディスプレイ番号 0 のデフォルトスクリーンにつなぎたい場合、 Solaris9 では ::1:0 と指定し、KAME パッチでは [::1]:0 と 指定することになります。 .また、フォントパスの設定では、IPv4 では従来通りの tcp/hostname:port という指定で、 IPv6 では tcp6/hostname:port という指定になります。 こっちは、明示的にプロトコルを使い分けて指定する必要があります。 .アドレス指定の流儀に関しては、 将来どっちになるのかはよくわからないのですが、 今年の前半にリリースされるといわれている X11R6.7 には、 Sun の contribute した IPv6 実装が入るという噂があります。 .どうも困ったことに、Solaris9 の X の IPv6 実装にしろ、 ReflectionX のそれにしろ、 商用のものは公式情報が皆無なので使い方がよくわからないんですよねぇ。 IPv6 サポートの意義が広告効果だけ、というのはちょっとねぇ。 .どこぞのは、作ってる人々自身が作ってる段階でそういうのにうんざりしたし、 実際に作ってる人々にそういうののマニアがいるので、 きっとそんなことはないと思うぞ。 自分たちの使わないもの/使えないものなんて、 作ってもしゃあないじゃないですか ;-) |
.こういう話 。 「根拠のない女性優遇というのは、 性差別の撤廃という観点からは有害なのかもしれない」 一瞬そう考えて脳内(一部 irc でも)論理展開してみた。 でも、さらによくよく考えてみるとさ、 こんなどうでもいい優遇ってのは悪意も罪もないんだよな。 マーケッティングというのは如何にして購買欲をそそるか、 という話だから、何らかの方法で「ターゲット購買層」を定めた上、 ターゲット購買層とそうでない層で値段やサービスに差別を行うのは、 それはそれでそういうもんなんだし、 たまたまターゲットの設定が性別だっただけだ。 だから結論としては、こういうのは別に構わんじゃないかと。 要するに羨ましかったら女装しろと←それは違う .むしろ、同じように男性優遇するとスグに女性差別だと抗議が来る 今の世の中が不健全なのかもしれない。 根拠のない男性優遇に抗議する団体はあっても、 根拠のない女性優遇にちゃんと抗議する団体というのを 寡聞にして聞いたことがないところをみると、 どうも、世の中には真の男女平等主義の運動家というのは存在しないか、 または居たとしても数が少ないようにみえる。私の偏見だろうか。 .ただまぁ、結局はこういうのは市場主義的考え方であって、 市場主義というのは平等主義とは直交してるし、 それどころか放っておくと不平等になる仕組みを内在してるので、 それを市場主義の悪い部分とする考え方からすれば、 「根拠のない男性/女性優遇というのは、 性差別の撤廃という観点からは有害」 というのは真のような気もするのう。 まあ、つきつめれば上で書いたようなマーケッティングそのものが 否定されちゃうんだけどさ。 ひとつ上の段落で書いたような「不健全さ」というのは、 実際には運動家たちの責任ではなくて、 世の中が実際に男女不平等という不健全さを持っていることの 裏返しなのかもしれないにゃ。 その不健全さが大きいから、バランスが保てなくなって、 「なんでも差別」になっちゃうんだろう。 一言で言えば、社会組織というものの自律神経失調症やね。 |